酸素の一般知識

1.脳は常にエネルギー源として血糖と酸素を必要としています。脳の重量は1.4キログムで体重の2%程度ですが、酸素消費量は全身の25%にあたります。
2.世界のスポーツ界では簡易ボンベや酸素濃縮器を利用して試合の合間や後に高濃度酸素吸入を行うことが広く行われています。これは疲労回復だけでなく筋肉に早く酸素を送り込むことで老廃物の分解を助け試合中の事故や故障を予防する効果があるからです。
3.低酸素と頭痛(濱田潤一、北里大学専任講師)
頭痛は低酸素状態あるいは二酸化炭素濃度高値の状態で引き起こされる。
4.酸素が足りず二酸化炭素が多い低酸素(安保徹、新潟大学名誉教授)
がん患者には貧血傾向があった。健常者と比較し患者さんは酸素量が少なく二酸化炭素量が多いことも調査からわかりました。
5.生命にとって酸素とは何か(小城勝相、奈良女子大学教授)
栄養素の消化、吸収、代謝、神経の情報伝達、ホルモンの作用、遺伝子の合成、タンパク質の合成、細胞の増殖、記憶、思考など全ての生命現象は化学反応によって行われます。その化学反応の中心の一つが「酸素」です。アミノ酸を結合してタンパク質を作るのに膨大なエネルギー、つまり酸素を必要とするのです。腎臓は血液から不要物を取り除いて尿をつくる臓器で、その作業のために沢山の酸素を使っています。尿は解毒の問題を解決してくれます。私たちは体にとって有害な物質を食物と共に摂取しています。食品添加物、医薬品、農薬、天然に存在する毒などいろいろです。これらは主に肝臓で化学反応を受けて、かなりの部分が腎臓から排泄されます。その化学反応とは酸素を使って水に溶ける物質に変えるというものです。毒物のほとんどは油に溶けるが水に溶けにくい疎水性物質です。水に溶ける物質に変えれば尿で捨てることが出来ます。
6.酸素は病気にどうかかわるか(三村芳和、東京大学医学部准教授)
腫瘍は酸素不足を原動力として勢いを増す。酸素が普通にあるとかえって成長できない。ちょうどよい低酸素状態が腫瘍を活気づかせる。
酸素不足によって白血球の殺菌作用は落ちる。細菌が侵入してくると体は酸素をミトコンドリアでエネルギーを作るためよりも活性酸素をつくるほうにまわす。これにより細菌の細胞壁を破壊する。ヒトは1時間あたり10の9乗個の細菌を処理できる。このとき酸素消費は普段の20倍にも達し、周辺から酸素を奪うことになる。
外科医は肺の換気がよくない患者では傷の治りが遅れることを経験的に知っており、傷口が元に戻るには栄養価とともに「酸素」の適度な補給が必要なことに気づいていた。
(だから手術後は酸素を吸わせているわけですね)